「しどみ」のお話し

 「しどみ」と言う名はなかなか聞きなれない方が多いと思います。
地元ではくさぼけ(草木瓜)または、じなし(地梨)と呼ばれているバラ科落葉小低木です。枝にはトゲがあり陽当りの良い所に自生する生育旺盛な植物です。わかりやすく言えば観賞用の「ぼけ」の原種でもともと野生に自生している植物です。
 私が幼い頃(昭和40~50年代)道の路肩、川の堤防、野山にに沢山自生していました。たぶん下刈りや手入れが行き届いていたのでしょう。この「しどみ」は下刈りをしていない荒れた場所では育ちません。昔の農家は家畜を飼育していたため、餌として下刈りした草を持ち帰っていました。そのためいつも陽当たり、風通しがよくたくさんの「しどみ」を見かけることができたのでしょう。春先に燃えるような「真っ赤」な花が咲き、初夏から秋にかけて結実します。梅ほどの大きさで緑色をしていますが晩秋に向かい黄色に熟し良い香りを放ちます。母が芳香剤代わりにタンスに入れたり、部屋の片隅の置いていたのを覚えています。食べては酸っぱくて食用には向きません。しかし、昔は食べ物に乏しく「口に入るなら何でも」と覚悟し、顔をしかめ、かじって食していました。とにかく「酸っぱい果実」です。「しどみ」を知っている方とはいつもこの実を食べた談議で盛り上がります。この実を焼酎で浸けて1年位経ちますとなんとも言えない良い香りの「しどみ酒」ができます。昔、農家では自家製の「しどみ酒」を作り大切なお客様に振舞っていたのを覚えています。また「健康酒」としても重宝されていました。
 
この「しどみ」は成長旺盛で驚くほど次々と枝が伸びます。このパワーが実にも凝縮されるのだろうと感じています。しかし、雑草に囲まれ風通しが悪いと弱ってしまいます。強さと弱さを持つ魅力ある植物です。

しどみ酒の飲み方
健康酒として食前酒または就寝前に盃一杯、冷やしても常温でもロックでも、香りがよいので焼酎の水割りに少々入れても美味しくいただけます。炭酸水で割るのもお勧めです。いろいろとお酒の香り付けにお試し下さい。
余談1
幼い頃祖父から「しどみの花を摘むと家が火事になるから採るな!」と言われていました。今思えば花を摘むと貴重な実が結実できないからでしょう。
余談2
毎年秋になると、実を直接買いに来るお客さんYさんがいます。毎年自分でしどみ酒を1年分仕込みます。Yさん曰く「いや?これ飲んでから調子よくて、××も××も良くなって、これなしでは生きていけないんですよ~。」と言いながらタバコをスパスパ吸っています。(笑)どうかお身体お大事に。

 しどみの成分分析試験結果 一般社団法人 日本食品分析センター 試験日2019.12.5
総アスコルビン酸 (総ビタミンC)
病気に対する抵抗力、抗酸化作用、癌、動脈硬化、老化防止等。
          しどみ    188mg/100g         日本食品分析センター  
         レモン果汁    50mg/100g         

リンゴ酸
食物をエネルギーに変換させる「クエン酸回路」を活発化させる。
疲労回復、線維筋痛症の症状を抑える。漢方でもリュウマチに効果があるとされる。
       しどみ   3.26mg/100g        日本食品分析センター
きのこ類(生、乾しいたけ)1.00mg/100g       対比参考資料 文部科学省食品データベース 1位

キナ酸
尿路感染予防、アルツハイマー、パーキンソン病の予防に効果があるとされる。
アミロイドβによる神経細胞欠損から細胞を守り、低酸素から神経を守るたんぱく質発生を促す。
        しどみ   0.94mg/100g  日本食品分析センター
               キウイフルーツ   0.80mg/100g     対比参考資料  文部科学省食品データベース 1位

その他有効成分
カルシウム   40.6mg/100g  
αカロテン    8μg/100g      抗酸化力を高める。
βカロテン    49μ/100g   ビタミンAに変換、シミ予防、皮膚、粘膜の健康維持。
βクリプトキサンチン 99μ/100g    癌、糖尿病、リュウマチの予防効果。

柑橘系類の実としては様々な有効成分がバランス良く含まれています。
残念ながら「香り」の分析はできませんでしたが「麗しい上品な香り」です。
昔から農家では自家製の「しどみ酒」を造り、健康酒として大切にしていたのがあらためてわかります。

お客様のお話
有名旅館のオーナー様は幼い頃、小児喘息に悩まされていて親御さんよりいろいろな薬を飲まされましたがなかなか良くならず、最後に「しどみ酒」を泣く泣く飲まされたおかげで治ったということです。(地元ではよく聞く話です)また、不眠症にも効くと聞きます。